怪談 哄笑、或いはラヂヲ頭

わたしゃ霊感なるものはない。
よく何か連れてるんじゃないかなどと霊感のある友達に言われるのだが、何にも見えない。
だから趣味にしていたトレッキングでも、何にも見ないし、樹海歩いた時も癒しになっても、その手の類は見ていない。
ホラーな夢は沢山見るのだが、霊感では無いだろう。
その代わり、周りには霊感が無駄に豊富な悪友共が多い。
探偵屋さんから解決不能の心霊捜査を依頼されるグループの仕事をしているという同い年の友人から、よく実話とされる会談を聞かせてもらった。
仮に彼のことを白銀としておこう。
存命中なら再会したいものだ。
かつて鎌倉の有名な幽霊屋敷、サザエさんの家にもそんな捜査をしたそうだ。
かなりヤバい体験も有るようだが、全ては聞けなかった。
何しろ、今考えたらふんだんにツッコミ所は有るにせよ、上手く語れりゃ、背筋を寒くさせることは出来るだろう。

彼とは東京都目黒区の新聞販売店で出会った。
アルバイトで住み込み、寮住まいだが、かなりフットワークの良い奴で、頭も悪くないが中退で、遊び人ではあった(笑)
仲良くなり、偶に彼に寮の部屋で朝まで実話怪談をきかせてもらっていた。
かなりオカルト関係の知識も豊富で、ラヴクラフトも彼から聞いた。
そんなある日。
深夜にまたとっておきの怪談を聞いていたとき(この話もかなり凄いが、今回はそれが主題ではない)
その当時はバブルの真っ最中。豊田商事事件が起きて、日航機が御巣鷹山に墜落し、リクルート疑惑が巻き起こり、岡田由希子が四ツ谷で脳漿を瀝青に飛び散らした後の時代だ。

将にその時代の徒花みたいな事件と連動するようなかなりヤバい話の終わりを迎え、次の話に行こうとするとき、それは俄かに起きた。
吾が部屋廃物閣に負けないくらい物資が豊富な狭い部屋にいきなり女性の哄笑が巻き起こり、それで満たされた。
彼の部屋のBGMは、まだ流布し始めたばかりのCDからのさだまさしか、オフコース。その女性の哄笑は聞こえてくるというよりかは、頭の中から何処からか電波で送られて受信したかのような聞こえ方だった。
私には霊感は皆無だ。
明らかに聞こえ方が違う。
SFのエスパーものの、テレパスみたいな聞こえ方だ。
しかもかなりの大音量。
其処は
目黒の碑文谷警察署、常盤松女子大のそばで、木造のアパートも多々残る地帯だ。
新聞販売店が宿舎として、駄菓子屋の二階を借りていて、隣にも販売員が居るのだから、普通の音なら間違いなく隣や大家が怒鳴り込むだろうけど、そのような苦情を言いに来る者は現れなかった。
吾輩もかなり恐慌していたが、白銀もかなり顔が強ばっていた。
「チョット落ち着いて、じっとしてろ」
そう言い、コップ一杯の水を汲み、机に置いた。哄笑は止まない。
「これでだいぶ防げる」
そして部屋を飛び出した。
何をしに行ったかは解らない。ただ、頭の中でわんわんと響いていた哄笑は段々ボリュームが徐々に下がりつつ、小さくなった。どの位時間が経ったのだろうか。
白銀が戻ってきたら、その異常事態は終息した。
何をしたかを尋ねたが、適当にはぐらかされた。魔術的な精神攻撃かな(笑)
まぁ、何らかの攻撃だと言うのは彼も認めた。
コップ一杯の水は、この手の精神攻撃には防御としては有効だと言った。
話の続きをしようかと彼が言い出したとき。

また哄笑が頭の中で巻き起こった。

白銀は舌打ちして、悪いと言いつつまた、部屋を出た。
今度の哄笑は更にボリュームが増して、怖いと言うより、うぜぇ消えろ、この野郎! と怒りを覚えるほどの煩わしさだ。
独り白銀の部屋で、哄笑を味わっていた。

二度目の哄笑はいきなりボリュームを下げて前よりも早く終息した。
ほどなくして、白銀が戻る。
ニヤリと笑いながら、もう大丈夫さと言いながら、白銀は毎回楽しみにしてるビラフを仕込みに掛かった。
魔術的にはテレパシーみたいな方法で、この手の現象を起こすのは可能だと彼は言う。
何で霊感ゼロの吾輩がそんなラヂヲ頭みたいな現象を体験するのかと問えば、「お前は無いかも知れないが、俺は強い。そんなやつといれば、鈍感も見られるさ」
しかしながら、攻撃される様な心当たりはあるのかと問うてみれば、「…まぁね。暇な奴は沢山居るんだよ。その話もまたするよ」
真偽は兎も角、更に怖い話を彼には聞くことになる。

検証すれば、多分ツッコミ所は満載だが、大音量の哄笑が吾輩と白銀しか聞いてないと言うのは腑に落ちない。
後日隣の人に訪ねたら、寝ていたが、騒音なんて無かったよと言われている。

彼が生きてりゃ、また新しい怪談話を聞きたいものだ。
話す気になったら、また書こうと思う。
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by sunnyspot-gunman | 2013-02-17 03:06 | 廃物閣通信